訃報です

 すでにtwitterでご存じの方もおられるかと思いますが,昨日(4月10日)夜にエコノミスト岡田靖さんが亡くなられました.1月半ばに入院されたものの,その後の回復は早く2月末には退院され,3月半ばには通常業務に復帰されていました.そのため,まさか突然このようなことになるとは考えていませんでした.
 岡田さんは……びっくりするほど鋭く,あまりに(学問的に)潔癖で,呆れるほどに完全主義,そしてシャイな方だったため一般に名を知られることはなかった氏ですが,20年にわたって間違いなく日本の経済論壇のキーパーソンの一人でありつつけた方です.80年代の第一次翁岩田論争の頃から金融政策論争の影の主役として活躍され,90年代末にはまさにワンマンアーミーのような活躍でネットにおける経済論壇を確立し,近年もまた浜田宏一先生をサポートして金融政策論争の縁の下の力持ちとして活躍されていました.そして,大和証券CSFB証券で数多くのエコノミストを育てたことでも有名です.日本で最も理論に通じたビジネスエコノミストであり,日本で最もビジネスに通じた経済学者であった岡田さんの死が日本の経済論壇に与える影響ははかりしれません.


 飯田個人にとってもオフィシャルな指導教官以上に影響を受けた人でもあります.もともと飯田は周波数領域の単位根とか戦略的在庫動機とかを研究していて,マクロ経済政策にはそれほどの興味をもっていませんでした.ふとしたきっかけで岡田さんと論争をした際に「こてんぱんにやられ」たことが現在の僕の研究の端緒となっています.僕以外にも岡田さんに説得され,論破されたことで金融政策の重要性に目覚めたという方も多いのではないでしょうか.


 岡田さんの悲願は「適切な経済政策運営によって日本経済が回復を遂げること」でありました.その第一歩であるデフレ脱却への歩みが始まりつつある今,岡田さんが亡くなられたのが残念でなりません.

岡田靖氏(ドラエモン・銅鑼衣紋)氏関連

最近の岡田さんの公刊論文*1

岡田靖安達誠司岩田規久男「デフレ克服には金融政策のレジーム転換が必要」『エコノミックス』第7号、2002年春。

岡田靖安達誠司岩田規久男大恐慌と昭和恐慌に見るレジーム転換と現代日本の金融政策」原田泰・岩田規久男編著『デフレ不況の実証分析──日本経済の停滞と再生』東洋経済新報社、2002年10月

岡田靖「デフレはどれくらい日本経済を蝕んでいるのか」岩田規久男編『まずデフレをとめよ』日本経済新聞社、2003年2月。

野口旭・岡田靖「金融政策の機能停止はなぜ生じたのか」岩田規久男・宮川努編『失われた10年の真因は何か』東洋経済新報社、2003年5月。

岡田靖安達誠司岩田規久男「昭和恐慌に見る政策レジームの大転換」岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』東洋経済新報社、2004年4月。

飯田泰之岡田靖「昭和恐慌と予想インフレ率の推計」岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』東洋経済新報社、2004年4月。

岡田靖飯田泰之「金融政策の失敗が招いた長期停滞」浜田宏一・堀内昭義・内閣府経済社会総合研究所編『論争 日本の経済危機──長期停滞の真因を解明する』日本経済新聞社、2004年5月。

岡田靖浜田宏一「実質為替レートと失われた10年」『季刊 政策分析』第4巻第1・2合併号、2009年3月。

Koichi Hamada, and Yasushi Okada, “Monetary and International Factors behind Japan’s Lost Decade,” Journal of Japanese and International Economies, forthcoming.

岡田さんへの弔花・弔電

 岡田さん,銅鑼さん,ドラエモンへの弔花・弔電,または参列をと考えていらっしゃる方は,葬儀日程が

告別式
4月16日11:00
代々幡斎場(東京都渋谷区渋谷区西原2−42−1)
喪主:岡田美稀さん

となっておりますので,前夕までに送付いただければ確かに受領できるかと思います.