就職サイトと差別(?)問題

本田先生のblogで「就活情報メールの量が大学によって異なる(高偏差値大学にだけメールが沢山来る)」という事実をもって就職情報サイトの弊害が主張されています.就活情報サイトの弊害と言ってもいろいろなんで,


「問題を分割して考える」


というここをたまに除いている人にとっては,耳タコというかもうウゼェよっていう方針に従って考えてみましょう.


さて,大学のランクによって提供される情報が異なるというのは私が大学生の頃から変わらないのですが,なぜこのようなことが起きるのかを求人情報提供のルートについて考えてみましょう.

第一に,株主経営者間のプリンシパル・エージェント問題は捨象しましょう.もし,専門経営者が株主の利潤最大化を無視して学閥優先をしているというのならば,これは専門経営者の背任問題です.ぜひ厳しく追及すべき問題でしょう.

企業側はなんとかして利潤最大化に資する人材を獲得しようとします.しかし,このような人捜しに費用はつきものです.日本……というか世界の全人口から最善の人を選ぶということは費用の観点から無理な話.ここまで極端な話をせずとも企業は,大学名を絞り込むことで「出身大学のレベルは低いが実は有能な人材を逃す」というLossと応募者が減ることで事務手続き費用(時間的なものも含む)が低くて済むというBenefitを比較して行動を決定しています.

ここで,実はLoss(もっといい人を逃している)の方がBenefit(手間を省く)より大きいのだと主張するのは論理的です.もしそうならば論争の焦点は上記のコストとベネフィットのどちらが大きいのかという話に集約されます.また,もっと小さな手間でもっといい人を捜す方法がある(例えばすごいスクリーニングテストの考案など?)という提案もまた意味のあるものと言えるでしょう.

学歴によるスクリーニングが企業の費用便益の観点からは正当であるとするならば,それに反して「学歴によるスクリーニングをやめよ!」というのは,学歴差別による不利益を株主の負担で補償せよということになります.平たく言うと,株主に暗黙の税負担を求めるわけです.これもまたひとつの論理的な主張でしょう.

しかし,これらの問題をwebでの就活という「システム」に求めるのはあまり実りあるものとは言えません.仮に,企業側の依頼を無視して就活情報を扱う企業が学歴別の配信を行っているならば問題でしょうが,それはおそらくないでしょう.すると,就職サイトはクライアントの要求に単に従っているだけということになります.これで批判されちゃあたまりません.


問題を整理すると,本田さんの話は


①経営者は株主の意向を無視して(利潤最大化に反する)学閥優先人事を行っている!株主は経営者への監視をせよ.
②能力ある人材の選別にあたって学歴をスクリーニングに使うのは無駄が多い.もっと良い方法があるからお試しあれ.
学歴差別撤廃のために株主は金銭的な負担をすべきだ.


のいずれかの形式をとるべきではないかと思うのです.