しょうこりもなく酒の話
先週から今週にかけては神亀の代表的な銘柄のローテーション(神亀→ひこ孫→神亀上槽中汲)を飲みました.しばし,藍の郷,紀の酒純米吟醸生原酒といわばすっきり繊細な女酒中心に飲んでいたので,ひさびさの重厚な飲み口で楽しめました.
純米酒といえば燗!という人も多いですが,僕は軽めのおつまみと一緒に冷やを1合,肉や味のしっかりしたモノと一緒に燗で1合がベストな飲み方だと思います*1.神亀は冷やで飲んでもやっぱり旨いし,燗上がりによる変化も楽しめるのでお勧めです.
それと同時に……こんだけ神亀・神亀っていっといてこれを読まないのはどうだろうと思い
- 作者: 上野敏彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: 単行本
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僕は,基本的に商品生産者のパーソナリティに興味がありません.絶対に友達になりたくないような嫌みなヤツが作っていても旨いモンは旨い.正直じいさんが伝統を絶やさぬように苦労に苦労を重ねて作っていても不味いモノは不味いでのす.神亀酒造は日本初の全量純米醸造,その精神が普及して現在の純米酒の再興につながるわけですが……「今」神亀を飲むのは,「今もなお」非常に優れたメーカーだからであってそれ以上でもそれ以下でもありません.というわけで本書のメイン部分の人間ドラマはそれほど興味がわきませんでした*2.
むしろ面白かったのは,長期熟成*3に際しての税務署との戦いです.熟成のために日本酒を貯蔵するのというのは一種の在庫行動です.出荷されないと税金は取れません.すると,ある酒造メーカーが長期熟成をはじめるとその当初は税収が減少することになります.これに対して税務署は「在庫が多いと値崩れするから」「日本酒の価格維持のために」という大義名分の下に「在庫があるメーカーでは次年度の仕込み量増加を認めない」という指導を行います.行政指導が日本酒の有り様をいかににゆがめていたかを示す逸話と言って良いでしょう.
とかなんとか思いつつ,今日あるデパートの日本酒売り場にいったら合成清酒をしっかりと「リキュール類」と表示して販売していて好感が持てました.多くの人にとってパッケージだけでは合成酒・三増酒と日本酒は(ぜんぜんちがうものなのに!)区別がつかないでしょうから…….
昨年の酒税法改正で,税法上,合成酒は日本酒ではなく混成酒(リキュール)類の一分類(合成清酒)になりました.しかし,日本酒的なパッケージで「リキュール類」と書いてあるとわかりにくいためか,はたまた別のインセンティブがあるせいか,細分類の「合成清酒」と書かれるケースがほとんどです.もともと合成清酒*4は日本酒じゃありません*5. 税法上の区分が正常化されたのはめでたいですが,いまだに合成「清酒」という名前が残ってしまったのは残念です.せめて「合成酒」にしてほしかったなぁ.
学生がはじめてお酒を飲むようになって合成酒を飲んで日本酒嫌いになる……というのを防ぐためにもわかりやすい表示(特にチェーン居酒屋などで!)が欲しいところです.