連作の難しさ……というかなぜ連作は避けるべきか
12月1日のエントリでも取り上げましたが,『ウェブ進化論』を読んで以来,すっかり梅田望夫氏のファンなので,『フューチャリスト宣言』も楽しく読みました.
氏の持ち味は,細かな点を気にせずに未来へのヴィジョンを示すところにあるので揚げ足取りはしません.というか,そんなの気にならないくらいスピード感のある対談です.おまけについている氏と茂木健一郎氏による高校・大学での講演録もなかなか.一度ナマで聞きたいなと思います*1.
でもですね.なんか不安というか不満が残るんです.僕は性格がひねくれてますから,なんで僕にとってこの人の話が心地よいのかな? と思っちゃう.この不安を解消するために,『ウェブ進化論』を再度パラ読みしてみたんですが……なんとなく理由がつかめてきました.
作を重ねる毎に,氏の話がよく言うとわかりやすく,悪く言うと誇張されているように感じるのです.なぜこのような自体が生じるのか.囲い込んだターゲット顧客層がもっと極端なモノを欲するようになるためでしょう.茂木健一郎さんの本は読んだことがないのでわかりませんが,同様の傾向はあるかも知れない.その結果,紋切り型の日本批判がやや目立つ気がします.
人間や社会の問題,さらには未来を語るとき……その評価尺度の不明確さに由来して,この傾向はさらに強くなります.梅田氏は物書きが本業じゃないので,多分1年・2年くらいたつとまた新しいネタと思考で楽しませてくれるでしょうが,批評家・評論家は言説生産を生業にする人は(なんといっても「生業」ですから)連作とファンの期待に応えることを止めることは出来ません.その結果,気づくと外野から見ると何を言ってるのかすらわからないプチ教祖になっているというという例も多い.これは「ダメな議論」の生産工場になる.
とかなんとか評論家的なことを言っていますが,僕もその轍を踏まないように気をつけないとなぁ(まぁ幸いファンの絶対数が稀少なのでプチ教祖は元々無理なんだけど).それを避けるために,
- 同じテーマの本を続けて書かない
- 一般書を続けて書いたらしばらく学術論文にウェイトを置く
- 学術論文が続いたら次はできるだけ専門ど真ん中とは少しずれた一般書を書いて自分の幅を広げる
一時,マクロ政策・金融政策ネタでの執筆依頼が多かったのですが,第一の理由よりいずれもお断りしました.んで,今度は論理・議論系の依頼が多いのですが(これは『ダメな議論』で書き残したことが多いので引き受けたいのは山々なんです)WIRED BLOGのほうでちょこちょこ触れるにとどめておきたいと思います.さ〜て,そろそろたまには研究するかな.
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*1:って思う人がたくさんいるから以下の問題が発生するわけですが^^