『歴史が教えるマネーの理論』正誤表

 発売から1年以上たっているので激しくいまさら感がありますが,拙著『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)の細かな誤りを訂正しますとともに,既に読んでいただいた方を混乱させてしまったことをお詫び申し上げたいと思います.

 まずは細部の誤りから.

■P22L10
×「1円=1年間の標準的生活/300円」
○「1円=1年間の標準的生活/300万円」

■P121LL1-2
×「4朱は2ドル」
○「4朱は1ドル」

■P123L3
×「薪は1.25ドル」
○「薪は1.33ドル」

以上二つはごく単純なミス.次は,次段落でちゃんと正しいことを書いているのですが,なぜ逆になってしまったのか自分でも不明です.連載から書籍化の際に表現のダブりを書き改めたり,節ごとの「繋ぎ」を急いで挿入したのでミスが生じたのかもしれません.

■P141L12-13
×「資産を売ると貨幣を放出し…マネーを増大」「資産を買うとマネーを回収する」
○「資産を売ると貨幣を回収し…マネーを減少」「資産を買うとマネーを放出する」

 このほかごく単純な誤字もあるのですが,こちらは見ればわかるので割愛します.で,これだけではなく致命的なミスが一箇所あります*1


■P132
 これこそが大問題です.18世紀半ばの話をするのに1820年前後発行の文政金銀を使ってしまっている.さらに,計算際に小判に含まれる銀量を無視してしまったため数値が不正確です.以下訂正.

まずは問題の通貨の目方をまとめていきましょう.
・金1両=丁銀60匁=16朱
・元文小判は「金8.5g+銀4.5g」
・元文丁銀60匁は「銀100g」
・文政丁銀60匁は「銀80g」
・明和南鐐二朱銀8枚は「銀80g」
・文政南鐐二朱銀8枚は「銀60g」
です.


元文金銀を使っていた明和時代の小判と銀交換比は(金をX,銀をYとすると)
8.5X+4.5Y=100Y
X:Y≒11:1
明和南鐐銀の登場により
8.5X+4.5Y=80Y
X:Y≒9:1
になったというわけです.


なお,文政時代の金・銀の金属での交換比と文政時代の小判・南鐐銀にしたがって計算すると,
金・銀の金属での交換比(小判と文政丁銀の交換比)
8.5X+4.5Y=80Y
X:Y≒9:1
小判と文政南鐐銀の交換は
8.5X+4.5Y=60Y
X:Y≒6.5:1
ここでも「銀貨の金貨化(佐藤雅美氏による南鐐二朱銀の発行の呼称)」によって銀が地金相場よりも高く評価されています.

*1:実はこれを指摘いただいたのが本エントリを書くきっかけです