やられた

 小飼弾氏にがっつり説教されてます.


人文科学者がダメな理由がわかる


 無限に関する話はまったくおっしゃるとおり.幾何級数的な成長が無限に続くというのは明らかに言いすぎ.言葉を選ぶべきでした.
 ただ留意してて欲しいのは,サブプライムローン以降に雨後のたけのこのように出ている危機本の多くが考えている「経済成長は無限じゃない」や倫理的な資本主義経済批判における「経済成長の限界」等の話はけして小飼さんの言及するような「無限」の問題ではないという点.現時点で技術成長の限界が来ているとか,資源制約を迎えているという話です.前者は技術進歩の収束傾向がまだ(観察されるほどでは)ないこと,後者はそれにくわえて付加価値と使用天然資源量が同じペースで伸びるわけではないことなどから否定できるでしょう*1

 小飼氏自身が言うところの,

ある「経済物」の成長はロジスティック式に従うが、イノベーションによって今度は別の「経済物」が登場するので、「大雑把」に観察すると今のところは幾何級数的に経済全体が成長しているように見えている


でその「幾何級数に見せかけている源泉」のイノベーションが枯渇が近いというのは(いま枯渇しているとか,20年や30年でくるという話も)眉唾な話です.ある「経済物」ではなく成長自体が収束するという話をする段階ではないということです*2


つまりは「いまのところ無限と考えておいても実際上の問題はない」ってはなし


ちなみに新財・新サービスについてのロジステック曲線を使った議論は


転換期の日本経済 (シリーズ現代の経済)

転換期の日本経済 (シリーズ現代の経済)


に小飼さんのイメージに近いもの(たぶん)があると思います.
 というわけで本田さんの質問への正しい答えは,

Q. 不断で無限の経済成長は可能なのでしょうか…中略…経済成長を無前提に是認してよいのでしょうか。

A. 現在の状況で経済成長は可能であり,不可避です.欲望の有限性・あるレベルの生活上のニーズが満たされたといったことによって中長期的な経済成長が止まるという状況は.(割引率は0ではないので)まだ成長の天井を考えるべき段階には達していません.(以下同文)


謹んで訂正させていただきます.



P.S.
ちなみに「不断」の方も厳密にはまずいですね.「近似的には不断と考えておいても致命的な問題にはならない」とすべきでした.50億人のちょっとした工夫が成長の大きな源泉のひとつですから,そういうカイゼンは不断と考えておいて問題は生じない.さらにはドデカイ(不連続的な)発明も,その知識や装置が一瞬にして世界に普及するわけではないので,マクロの経済にとっては飛躍ではなくじわじわとした連続的な成長として観察されるでしょう.

*1:新商品・新サービス・高付加価値商品はえてして資源集約的ではありません

*2:割引率は0ではないので