『経済成長って何で必要なんだろう?』刊行記念座談会

 私も参加させていただきました『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社,シノドスリーディングス)に関して各blogでの評論も一巡した観があります.以下,知人・blog知り合い以外の方からの感想で印象に残ったものを.

 sideAではなかなか好意的に評価いただきありがたい限りですが,おもしろいのはsideBの方.確かにキャッチアップ型の経済成長って攻略本を読みながらのRPGに似ている.それにしても「日本人は勤勉だ」「日本人は優秀だ」っていう自信が逆立ちして他者を侮る風潮を強めているように感じられる今日この頃.

 本エントリに続いて,「ベーシック・インカムは「溜め」につながるのか?」,「「経済成長論」に反対する理由」と『経済成長って何で必要なんだろう?』を詳細に,そして批判的に検討されています.典型的な疑問が整理されているので想定問答集として活用しようかと.blog主の懸念の中心は,地方への再分配批判を通じて「地方に住むこと」への批判が高まること.これはメディア戦略の問題かと思います.「他の条件によらない経済強者から経済弱者への再分配」と言った方がよいのかな.あとベーカムの実現可能性については次著を待ってください!

 本筋ではないのかもしれないけど,ちょっと再分配の修正を強調することの危険性を反省.都市・地方間再分配の是正や老弱間の再分配の修正というと……やっぱり「どこかから奪って」というイメージがついちゃう.現在の再分配水準(率ではなく)を維持しながら正しい再分配をするための原資として経済成長が必要だっている点をもっとアピールしないといけないですね.これって行動経済学的(所有バイアス)な経済成長の必要性?

 なにはともあれ小飼弾.小飼氏の考えている「経済成長の終焉」っていわゆる反成長論の議論とは正反対の,経済問題がどうでもよくなる社会のことなのね……ケインズの考える「次のステップ」みたいな.その意味で稲葉先生の言うとおり小飼氏の方が僕よりよっぽど無限の成長論なのかもしれない.希少性問題がバインドしなくなれば確かに経済成長はなくなるし,経済学(=希少性問題の学問)は幸福なエンディングを迎えて消滅できる.確かにそういう方向は不可能ではない.で,ここでのポイントは書評の本筋じゃなくて……

だからこそ、「シノドスは自然科学者も招け」という思いはますます強くなったのだけど。

の部分.ここはかなりカチンときた(笑).なんというか……ちょうど宿題をやろうと思ってたところでお母さんに,「宿題はやったの!」と言われた感じ.しばしお待ちあれ! 現在人選進行中♪

 このほか,凡骨記さんは僕が何をやりたかったのかを手短にまとめていて微苦笑でした.googleブログ検索で引っかかったものしか見てないので,まだまだ他にも感想等あがっているのかもしれませんが,興味深いエントリがありましたらご紹介ください.



 さてさて.そういえば今日のエントリの本題はこっから! これらのblogの感想などにも配慮しながら来週の日曜日に,紀伊國屋書店新宿本店でトークイベントをさせていただきたいと思います.

紀伊國屋書店新宿本店
――『経済成長って何で必要なんだろう?』刊行記念座談会
経済成長と寛容さの実現
→紀伊國屋イベント紹介


経済成長は人気がない。しかしエコノミストの飯田氏は「先進国では年2%の成長は当たり前だし、経済成長によって格差や貧困の問題を解決することができる」という。気鋭のエコノミストと批評家が、経済学にまつわる誤解と「経済学思考」の重要性について語り合う。


【出演者】飯田泰之エコノミスト),荻上チキ(批評家)


 なんか微妙な紹介ですが,チキさんがナビゲーターですんでしっかりと身のある話に仕上げてくれるんじゃないかと(他力本願かよ!).入場無料ですので,お暇な方は日曜の午後のお時間を少々ちょうだいできれば幸いです.


経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)

経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)