小飼弾氏へ……「宿題やったぜ!」

Synodos Seminar #46 八代嘉美「再生医療という「魔法」」

 これまでシノドス編集で出版された2冊(『日本を変える「知」』『経済成長って何で必要なんだろう?』)への小飼弾さんの書評は,一冊目『日本を変える「知」』について,

人が自然の一部である以上、自然科学抜きの「知」などありえないはずなのである。芹沢一也は死のドス、もといシノドスに自然科学者を招くべきである。彼らなくして、シノドスのこの「痴」からやまいだれが取れることは不断かつ無限にありえない。(人文科学者がダメな理由がわかる - 書評 - 日本を変える「知」

と酷評されましたorz そして,二冊目『経済成長って何で必要なんだろう?』についても,

シノドスは自然科学者も招け」という思いはますます強くなったのだけど。(目指すところは同じなのだが - 書評 - 経済成長って何で必要なんだろう?

とのご意見.トーンとしては2つめの書評の方が穏やかですが,こっちの方が「カチン」と来ていました.だって……ちょうど自然科学者のシリーズの人選を進めていたところなんだもん(泣).ちょうど宿題やろうとしてたら親に「ヤス!宿題やったの!」といわれた小学生の気分! ムキー!
 その後,僕が『脱貧困の経済学』や学会論文の執筆でしばし企画を進められないまま年末になってしまいましたが,


やっと宿題やった!


そして,この後も続々自然科学者を招いて来年には僕のような文系人間向けの科学リテラシーの本へとまとめ上げていきたいと思います.


さてさてさて,前置きが長くなりましたが,

Seminar 46
八代嘉美「再生医療という「魔法」」


司会 : 飯田泰之
日時 : 2009年12月12日(土)15時〜17時
場所 : シノドス東急田園都市線駒沢大学駅


セミナー概要:
 新聞やテレビなどのマスメディアなどでは遺伝子改変作物から脳科学にいたるまで、いわゆるライフサイエンスに関わることばを見ない日はなく、現代は科学と社会が密接な関係を持つ時代である。しかし、非専門家の人々の関心が科学を志向し、素養を身に着けるようになっているかといえば、残念ながらそうとはいえない。ほとんどの読者・視聴者にとって、著名な科学者が語っているからには本当のことなのだろうという盲信が存在しており、こうした盲信が逆に科学への過剰な期待と失望、そして疑似科学やスピリチュアルブームとよばれるようなものを招来していると考えられる。今回はiPS細胞などの再生医療の研究紹介を中心に、現在のライフサイエンスが何を目指し、何ができないのかを提示し、科学リテラシーとは何なのかを考えるきっかけとしたい。


八代嘉美(やしろ・よしみ)博士(医学)。現在慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター特別研究助教。1976年生まれ。愛知県出身。東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻修了。専門は幹細胞生物学、科学社会技術論。現在はiPS細胞研究を対象に、研究者と公衆の間における生命科学への認識の差異の研究を行っている。著書に『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』(平凡社)、『再生医療のしくみ』(共著、日本実業出版社)。

Synodos Seminar #47 稲葉振一郎「社会学の居場所」

 そして八代さんの次の日は稲葉振一郎先生の「社会学の居場所」.これは速攻で残席僅少だからまぁ宣伝しなくてもいいか……というと手を抜いたと思われちゃうので宣伝.
 僕は常々,現在の論壇には社会学・心理学・経済学・政治学etc.の相互交通必要だという話をしています.そのなかで僕みたいなエコノミストにとって「近くて遠い」領域の代表が社会学です.その不思議な距離感はどうも社会学から見た経済学にもあることみたい.稲葉さんは近著『社会学入門―“多元化する時代”をどう捉えるか』で方法論的全体主義としての社会学を方法論的個人主義を旨とする経済学に対置される社会科学のパースペクティブとして提示されています.
 今回のセミナーは方法論的全体主義としての社会学は何を目指すのか(目指せないのか)に関する見解について,飯田にもわかるレベルの社会学方法講義をいただきたいと考えております.

Seminar 47
稲葉振一郎「社会学の居場所」


司会 : 荻上チキ
日時 : 2009年12月13日(日)15時〜17時
場所 : シノドス東急田園都市線駒沢大学駅


セミナー概要:
 社会学はもともと、突き詰めると相容れない二つの衝動に駆られて発展してきた学問である。一方で社会学は、経済学、政治学、心理学等々をも包括する総合社会科学たらんと欲した。しかしその途方もない野望は、当の経済学や心理学に対しては、何ら脅威を与えるものではなかった。
 他方で社会学は現実的に、経済学も政治学も心理学もとりこぼした隙間に何とか入り込み、独自の存在意義を確立しようとしてきた。しかし近年ではそうした隙間も、経済学や心理学の肥大化・無節操化によって次第に狭くなってきている。
なぜ社会学はそのような苦しい位置にあるのか? 今後社会学に「立つ瀬」はあるのか? もちろん冷静に考えればいくらでもあるのですが、今回はまずは批判的に考えていきたいと思います。
 セッション前に拙著『社会学入門』に目を通しておいていただければ幸いです。


稲葉振一郎(いなば・しんいちろう)1963 年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専攻は社会倫理学。現在、明治学院大学社会学部教授。著書に『「公共性」論』(NTT出版)、『社会学入門―“多元化する時代”をどう捉えるか』 (NHKブックス)、ほか多数。