もらいものいろいろ

 昨日遅ればせながら本年初登校……したらいろいろな本が届いていました.ざっと目を通したもの,これから精読せにゃならんものいろいろですが,以下短評.

『VOICE select どうなる!日本の景気』(PHP出版)

 献本っていうか執筆者の一人です(笑).2009年に月刊誌『VOICE』に掲載された景気に関する小論をまとめたもの.僕はあいかわらず,さっさとリフレしないと何もできないよというお話し.全体の論調としては民主党政権の経済政策に批判的菜ものが多いかな(というか僕自身褒めるとこがなかなかみつからないし^^).
 金融政策の必要性や規制強化の問題点については,ここの読者には耳タコな話だと思いますが,僕個人が非常に感銘を受け,説得されたしたのが浅川芳裕(月刊『農業経営者』副編集長)による「戸別所得保障制度で黒字農家は廃業に」という論考.現代の日本の農業の問題点を整理し,戸別所得保障制度がその問題点を強化することがクリアに論じられています.必見.

どうなる! 日本の景気 (Voice select)

どうなる! 日本の景気 (Voice select)

高橋洋一竹内薫鳩山由紀夫の政治を科学する(帰ってきたバカヤロー経済学)』(インフォレスト

 もはや紹介がはばかられるくらいの話題書ですが……名著『バカヤロー経済学』(晋遊社新書)の続編(?).献本来てることに気づかずに買ってしまった…….『バカヤロー』が経済政策全般を解説しているのに対し,こちらは民主党政権の閣僚の評価,政策評価,各政策が行われる政治経済学的な理由が中心.こういう本はカタログというか小論文が十何個並んだだけ……になりがちですが,「鳩山政権」を鳩山氏の学者としての専攻分野「OR(オペレーション・リサーチ)政権」と位置づけたことで,ストーリーに筋が通っていて読みやすいものになっています.

芦谷政浩『ミクロ経済学』(有斐閣

 学部テキストは応用・実証研究の人が書いたものの方が学生にとってわかりやすいというのが僕の持論なのですが,産業組織論からエコノミストの行動へと研究分野を広げられている芦谷先生の教科書です.装丁を見ると……有斐閣は新しい経済学教科書シリーズを出すと言うことでしょうか? これは教員は要チェックです.目次の組み立てを見ていると,ヘンダーソン・クォントによる『現代経済学』がなんとなく思い出される感じ.僕個人はマクロをやるための必読書はヘンダーソン・クォントこそが必読書だと思っているので,その一歩手前の本としてよいかもしれない.

ミクロ経済学

ミクロ経済学

現代経済学―価格分析の理論

現代経済学―価格分析の理論

井堀利宏編『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策5 財政政策と社会保障』(内閣府経済社会総合研究所)

 いわゆるバブル・デフレ研の研究論文シリーズ.なかにはWPですでに既読のものもありますが,これは精読が必要な本.亀田啓悟(関西学院大学准教授)の「日本における非ケインズ効果の発生可能性」は近年経済政策論争の中心になっている財政政策の効果を考える上で是非読むべき.それはさておき,この前CXの新報道2001に出たときに,朝の討論番組なのに亀田論文でも重視されているAlesina and Perotti(1995, NBER)が登場したときはびびった.


ISBN:9784904530054:detail:small
amazonに上がってないみたいなんですけど……なんで?

島田裕巳『金融恐慌とユダヤキリスト教

 えーと.帯の「神の怒りが「100年に一度の危機を招いた」」だけでお腹いっぱいですが,ちょっと読んでいくと…….さらにお腹いっぱい(笑).グリンスパンとクルーグマンは危機を自動的に世界が崩壊する予兆として解釈する……ってフハッ.「経済危機を例話として利用した宗教学の本」であって「経済書」ではありませぬ.

金融恐慌とユダヤ・キリスト教 (文春新書)

金融恐慌とユダヤ・キリスト教 (文春新書)