先進国の人口成長率と物価上昇はあんまり関係ないみたいです

白川日銀総裁:日本の人口動態の変化が成長率に影響
によると,日本銀行の白川総裁が,
「2000年代の10年間について先進24カ国の人口増加率とインフレ率を比較すると、両者の間に正の相関が観察されるようになっている」
と発言したとのこと.

 目から鱗の発言だったのでデータを見てみた…….もっとも単年の人口成長率がインフレ率を決めるという話ではないだろう.それでは,リーマンショックの影響が大きかった(のでインフレ率が下ぶれした)国がたまたま西欧・日本で,西欧・日本では人口成長率が以前から低いという見せかけ上の相関を拾ってしまう.そんな馬鹿な解釈を総裁がするわけがないので,この言及はあくまで趨勢的なものだと解釈する.

 そこでIMF定義のAdvanced economiesに関して,2000年代(2000-2009)の10年間の人口増加と同じく2000年代累計の物価上昇率をプロットしてみよう.

出典:IMF,対象国:Czech Republic, Denmark, Estonia, Finland, France, Germany, Greece, Hong Kong SAR, Iceland, Ireland, Israel, Italy, Japan, Korea, Luxembourg, Malta, Netherlands, New Zealand, Norway, Portugal, Singapore, Slovak Republic, Slovenia, Spain, Sweden, Switzerland, Taiwan Province of China, United Kingdom, United States(IMF Data and statの定義するAdvanced economies,データはInflation, average consumer prices, indexとPopulation)


 んーと.正の相関どころか相関係数マイナスなんですが……ちなみにIceland(一国だけインフレ率高い・がIceland)除くともっと負なんですが…….というかそもそもこの図を見たら普通は「関係ない」が結論のような気がしてならないんだけど,総裁発言はどういう意味で言っているのか謎だ.ちょっと数字の取り方や対象国変えただけで結論が逆転するような話は意味ない.

 なんだか最近「これ以上金融政策に出来ることはない」というためならなんでも使うという感じになってきていてイヤな感じだなぁ.白川氏の発言自体もあまりにも根拠が薄弱なのでいろいろ言いたいけど,それ以前調査統計セクションの人間はもう少ししっかりと総裁をサポートしないとダメなんじゃないかなぁ.


P.S.
記事公開当初グラフタイトルが「1990年代の〜」になっていましたが,これはtypo.頭の中がまだ前世紀なんです…….