12月13日発売『思考の「型」を身につけよう』

 ちょっと久々の思考法本! 『ダメな議論』(2006, 筑摩新書)以来だから6年ぶり? 今回はより個人的な意思決定,ビジネスにおける思考といったミクロの話を中心にしています.


思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)

思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)


 前書きはたぶんシノドス・ジャーナルあたりに載ると思うので,後書きをちょい出し.この後に校正でいろいろ書いたり直したりしてるので,そのものじゃないけど……こんなイメージの本だよ.

■あとがき


 思考をするための型として経済学をとらえ,経済学から思考の技を学ぶという試みはいかがだったでしょうか.本書は経済学の入門書や経済政策についての提言書とは大きく趣を異にしています.また,経済学をベースに生活やビジネス,ニュースを語るエッセイというわけでもありません.
 大上段に構えるならば,本書は(ともすると個別理論の枝葉末節に終始しがちな)大学教育における経済学の利用法に関して一石を投じた本といいたいところ.また,控えめに「飯田流経済学の活用法」を記した本であるということもできるでしょう.もっとも……飯田泰之経済学雑談大特集という指摘もあるのですが.
 筆者本人としては,明確な意図を持って執筆を進めた本でもあります.本書はこれまでに自身が書いた『経済学思考の技術』(ダイヤモンド社・二〇〇三年)と『ダメな議論』(ちくま新書・二〇〇六年)の中間項を埋める本になっています.『経済学思考の技術』は「経済学の思考法」に力点を置きながら書かれた経済学入門であり,『ダメな議論』は私が様々な議論を評価する際の技術を紹介した本です.
 私がものを考えるときにその基礎になるのは経済学の思考法です.それならば,「経済学の思考法」による「思考の技術」を書いた方がよいのではないだろうか……これが本書の執筆の動機です.
 経済学の思考法といっても,それが経済学オリジナルなものであるとは限りません.経済学は社会科学の一分野であり,社会科学は広義の科学の一分野です.そのため,「経済学の思考法」を紹介する手始めとして,より広い科学的な思考法そのもの,データから入り,問題を分割し,データによって検証するという思考の型の紹介から入ることにしました.実のところ,多くの大学のカリキュラムでは,文系に進んで科目選択を間違えるとこの一番の基礎を学ぶ機会を得られないで終わることが少なくありません.
 ついで,経済学といっても理論そのものではなく,経済学の理論をつくるための「準備段階」について多くの紙幅を割いています.日本の経済学のテキストは教養として学ぶ,大学のテキストとして用いる,資格試験の受験勉強に使うという三つの役割を求められます.そのため,どうしても「理論以前の部分」に関する説明は最小限にとどめられる傾向にあります.
 しかし,私は,経済学の思考の有用性は「理論以前の部分」にこそ詰まっているように感じるのです.制約下で主観的な満足度を最大化する個人・企業という視点から経済を捉えるならば,あとの経済学の仕事は「どんな切り口で問題を考えるか」と「実証的な重要性の検討」だけということになる.その意味で,3・4章こそが経済学の核に当たる部分なのです.
 経済学の基礎の基礎だけでも,私たちの思考と意思決定に大きな栄養を与えてくれます.自身の思考の型を作り,思考の技を学ぶという観点から経済学を学ぶ(学び直す)ならば,これまでの無味乾燥な教科書が,生き方を変える画期的な一冊になってくれるのではないでしょうか.
そのときに,本書がよいきっかけになったなと思い出していただければ筆者にとってこれに勝る喜びはありません.


 発売は来週の木曜日! 是非お買い上げを.そうでないならせめて書店で平積みの位置に置き直してやってくださいませmm