この組み合わせがすごい!

 夏休みも終盤戦に入り,卒論指導も本格化してきています.明治大学政治経済学部ではゼミが3・4年生の2年間だけなので,この二年間で「一応は形になった論文」を書かせなければならないわけです*1

 

 僕のゼミでは特に学ぶ対象については限定せず,「データ・統計を使って何かをする」という手法面だけを限定してすすめよう…と志してはいるのですが,やはり金融政策・財政政策に関する本をまったくやらないというも変な気がしてしまう.第一,僕のゼミで経済やらなかったら詐欺だもんね.

 そのため,この短期間にマクロ経済学やって,最近個人的に凝っている地域経済論の本も読ませて,さらに学生の興味に応じて社会学や労働関係の本もとりあげながら統計・計量の基礎を抑えてもらうとなると……

 

よほど効率的にやらないと論文っぽいものが書ける所まで仕上がらないんです

 

  毎年いろいろと手を変え品を変えで工夫していますが,いま一番重宝している本がこちら.

実証分析のための計量経済学

実証分析のための計量経済学

 

 (時系列以外の)いかにも卒論に使いそうなツールがしっかり紹介されていて,しかも分析例の多くが卒論・ゼミ論なので,事前知識がそれほどなくとも具体的な分析イメージをもって学習できる! ついでに「卒論ってこういう感じの分析をすればいいのか」という勘も身につく.これはすぐれものです.

 この本をみつけるまでは,数理社会学会の教科書(?)シリーズを使っていたのですが,やはり経済学科とは興味関心が違うので苦しんでいたところ.

 ごく基本的な統計学のテキストの後なら,むしろこの本を読みながらわからないところを泥縄式に別のテキストで調べる方法がよいでしょう.今年の春の卒業生については卒論を書き始める直前に読ませることになっちゃったけど,それでも卒論のクオリティに有意に効いた気がします.

 

 ただし,さらに慎重を期すなら,これに実証分析のイメージをもう少し固めていたほうが読みやすいかもしれない.例えば,コントロールとか同時性バイアスとかがどうヤバくて,どんな方法で解決できそうなのか……といった『実証分析のための計量経済学』一歩手前で,同書で説明される各手法がなぜ必要なのか,どんな時に使われているのかを知っておいてほしい.

 そんな漠たるイメージで悩んでいたところ,見つけましたよ!これ!

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

 

 労働経済学の最新の知見を知るために非常に有用な同書ですが,計量経済学を勉強する一歩手前の本としても大きな価値がある本だと感じます.人事・雇用の話なので,興味をもって読めますしね.

 本文のなかで登場する計量的な手法はそれぞれ「なぜその方法を使わないといけないのか」が明確で,さらにテクニカルノートでちょっとした解説も加えられています.

 

 早速後期の三年ゼミで『日本の人事』からの『実証分析のための』のコンボつかってみよう.

 マクロの計量分析でもこういうセットでものすごく効果が高そうな組み合わせないもんですかねぇ

*1:3年の1月から4年の7月くらいまでは就活モードなので,事実上10か月弱の準備と半年の執筆期間……