比喩ってむつかしいorz
先日告知させていただきましたシノドスでのイベント以外にも,なんだか7月は講義の鬼になりそうな予感.
というわけで,今日は初学者への講義の際の比喩の選定について考えてみようかと.
拙著『ダメな議論』の中で,「比喩に頼った論証は×」とかほざいておきながら,やはり説明の際には比喩を用いるわけです*1.
しかし,これがなかなか難しい.比喩自体が難解では元も子もないですし,経済の説明に自然科学や歴史のエピソード,ことわざなんかを使う際にはそのネタへの僕の理解度が浅いととんでもないミスリードな比喩になってしまいかねない.
実は『ダメな議論』の中にも結構この手の比喩ミスがありまして……初版では,
- 人間は皮膚呼吸しない
- タラバガニはカニじゃない
等のミスをやらかしています*2.これを見て「えっ!何がどう違うの!?」とか思っちゃった人はくまくまことkumakuma1967の出来損ない日記(2006/11/11)を参照ください.
漏れら文系な人間が「正しいと思われている理論が180度ひっくり返る例」として好んで取り上げる比喩が相対性理論でしょう.はっきり言ってこれは比喩として適切ではない,と僕は思っている.ニュートン力学は十分速度が遅くて重力が弱い場合,相対性理論の良好な近似になってるから……180度の変化ではなく,旧理論を特殊ケースとして含む一般性の高い理論の発見という理論の進歩の王道だと思う.
そんな風に考えていたので,先日知人と相対性理論の話になったとき気軽に「実際に人間に関係ある範囲ではニュートン力学しか使わないでしょ?」といったら,「いや原子時計の実用化とかでは相対性理論重要になるよ」と返されましたorz どっかで偉そうに言わないでよかった.