『Voice』9月号の浜田先生……そして,
『Voice』9月号特集は「アジア10大危機−"60年の平和"が壊れる日」,「民主党は官僚と闘えるか」の2本立て.民主党の圧倒的優勢が伝えられる中,一番の不安は確かに安全保障と経済政策ですしね.
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当然第一の話題は,浜田宏一先生による論文「日銀は産業界を苦しめている−英・米・欧に匹敵する大胆な金融緩和を」なわけです.まぁ産業界以外もずいぶん苦しめてると思うけどね.僕の以前のエントリ(クルーグマンがわかっていないこと)にも言及いただいています.とにもかくにも
- P209図1(主要国中央銀行のバランスシートの推移)
- P210図2(実質実効為替レートの推移)
- P211図3(鉱工業生産の推移)
をみろ!もう何も言うことはない……だとちょっと不親切なので,以下説明.
BOEは最大で3倍,現在も2.5倍のバランスシート拡大を実行,FRBも2.5倍.ケチで有名なECBですら1.8倍にバランスシートを拡大してマネーを供給する中……我が日銀はびた一文拡張を行っていない(それどころか幾分〆気味な時期も!). その結果,ポンドは30%の減価,米国は若干の減価,ユーロは変わらず……そして円は最大で3割の増価. この状況の中,サブプライムローンバブルとその崩壊の当事者である英米欧では鉱工業生産の低下幅は110->90程度なのに対し,震源地から遠い日本では110->70への急落.
日本の景気悪化要因はサブプライムそのものと言うより別のところにあるってことにそろそろ気づいてほしい…….
また,「ケータイ持ち込み禁止」については荻上チキさんと精神科医の和田秀樹氏の対論.和田氏の議論はまさに周回遅れとしか言いようのない稚拙さ.あまりのわかってなさにびっくりする.
今時「昔は原っぱで遊ぶことで運動能力もコミュニケーション能力も社会性も身につけることが出来た」「ゲームが子供をダメにする」「世界で大学生がPCを持っていないのは日本だけ」と今時2chでも見かけないDQNっぷり.どんなじいさんだと思ったら……まだ40代なのね.はっきり言って絶望的.精神科って統計とか論理,事実とか使わないんでしょうか? せめて自分の専門である精神科医としての立場から何かを書けばまだ読めるものになったでしょうに.
ちなみに『Voice』の対論はお互いに批判しあう形式ではないんだけど奇しくも荻上さんが(携帯の利用法について教育が必要だという文脈で),
理性ある年長世代に期待されるのは,ただただ特定の時期を和み,下の世代にブレーキを踏むことを求めることではなく,「可能なる運動方法」を次世代に手渡すことだ.そうでなければ,早めに「席替え」することを求められるだけだろう
と書いてあるのが笑える.和田氏のような「若者批判テンプレ」をコピペすれば評論とか言えた(そして原稿料がもらえた^^)世代の人にはさっさと席替えを求めたい.
それよりも更々に感動したのは山形浩生氏の連載の一節.ってかひさびさ論説を読んで涙が出た…….話題自体は裁判員制度に関するものなんだけど,なんていうか実に名文.山形さんは筆が立つなぁ……ぼくが書いたらこうも心を揺すぶる調子にはならないだろうorz
ぼくたちは,完璧な世界には住んでいない.それは誰でも当然知っているべき前提だ.そこで完璧ではない事態に直面したとき,ぼくたちはなにをすべきか? その全てに背を向けるのか? それとも,不完全な制約を受けた状態のなかで,最善の結果をもたらすために精一杯の努力をすべきなのか?
ぼくは後者だと思うんだが.
もちろん,これはつらい道だ.いずれも敵と野合したとなじられるだろう.