『2007年団塊定年−日本はこう変わる』

 最近はテレビなどに登場することも多い,原田泰氏「ひさびさの」新著です.農業経済出身で人口論に明るい,自身が団塊の世代マイナス1歳となかなか良い本の条件がそろっている本ではないでしょうか.

2007年団塊定年!日本はこう変わる

2007年団塊定年!日本はこう変わる

 本書に「斬新な提言」「最新手法によるの計量分析」「難しい理論モデル」を求めてはいけません.本書で得られるのは(団塊世代問題に関する)圧倒的な量の,そしてデータに裏付けられた知識です.これは原田さんの著作の多くに共通する特徴と思います.
 このような氏の本を読む度に,もしかしたら原田さんのメッセージは「材料とヒントは与えました……あとは自分で考えて下さい」ということなのかな?と感じます.一見無責任なように感じますが,「ごくまっとうな主張をみんなに納得して欲しい」という場合にはこれは一番よい方法論だと思います.
 分析から結論にいたる経路が書かれていると,どうしても「結論部分が気分にかなうか否か」で評価されてしまいがちです.説明しないと結論に至る筋道がわからない場合には,まぁ「分析から結論にいたる」部分を書かないとわからないでしょう.しかし,少なからぬ「結論」は基礎データさえ見ればだいたいわかる……というのが僕の率直な感想です.
 団塊世代問題を考える時には,必ずこれを手元に置いてから書き始めるべきでしょう.