某誌没原稿「雇用における構造問題」

 自分が面白いと思った原稿に限って根本的な修正を求められるもの.今回もそんなかんじ.通り一遍のことを書く方が楽なんだけど,ちょっと思いついちゃったので遊んでみたらやっぱ没だったのでそのまま転載.お題は「最近の雇用情勢とその解決策」について……まぁ雇用の話じゃなくて「いろいろでかい話をする人全体」への批判になっちゃってます.

「構造問題」は答えではない

 雇用の問題に言及する論者は決まってその「根本的改善には構造的な問題の解決が必要だ」といった返答をする.しかし,改めて考えてみると構造問題とは何だろう?その明確な定義はない.「構造問題=様々な難問」程度の意味しか無いのだから,雇用問題に限らないが論説において「構造問題」が説明のキーになっていたら,その筆者の真意は「この問題は難しくてわかりません」だと考えて良いだろう.
 雇用には様々な構造的問題がある.その一方で,政策的に十分対応できる部分もある.対策可能なところから始めることが現実的対応だ.
 現在生産拠点は国際的な展開を見せており,雇用は(絶対額ではなく生産性や特性を加味した上で)相対的に労働が安価な場所を目指す.その一方で賃金額は生活設計・負債計画に関わる大事であるため大幅には変化しない.
 この2つの単純な事実から,為替レートが安い国では雇用情勢は改善し,為替が高い国では悪化することがわかる.昨年来の独・仏・スイスの製造業業績,製造業雇用の改善には為替レートが大きな役割を果たした.
 もちろん為替レートがすべてではない(なぜなら構造的問題があるからだ).しかし,マクロレベルの政策による改善の方法があるのだから,まずはそれを行いながら,より長期的な課題に取り組んでいくべきだろう.