シノドス経済ネタ2連発

 シノドス経済ネタ2連発.田中秀臣氏と小島寛之氏です♪ ここまで対照的な2人を読んでみるのも面白いでしょ?

田中秀臣「イイ経済学、ダメな経済学 ― エコノミストぶった斬り!」

Lecture03 シノドス×光文社共催
田中秀臣「イイ経済学、ダメな経済学 ― エコノミストぶった斬り!」
日時 : 2009年11月8日(日)9:30〜17:00
定員 : 50名 参加者募集中です!
http://synodos.jp/event/index.html

 僕としては第四部が特に見たいような……見たくないようなw なんかしれっと僕入ってるし(泣).
 ただ,僕としてはエコノミストの格付けはいくつかの段階に分けて行わなければならないと思っています.
 経済学・経済統計に関する知識に関して,

第一関門:教科書の経済学を理解しているか否か
第二関門:内生的成長理論,RBC,New Keynesianモデルを理解しているか否か

上がっているメンツを見る限りマクロの話中心でしょうからマクロ基準で.第一関門をクリアしていないエコノミストはかなり多い…….そういう人はホントいくら叩いてもいいと思う.ってか教科書の経済学分かってないのになんでエコノミストとか経済学者って言ってられるのか謎.教科書レベルの知識無しに経済学を批判する人までいて噴飯ものです.ちなみに第一関門を見分けるコツは,

比較優位説理解してる?
国際収支統計わかってる?
IS-LMフィリップス曲線わかってる?
立命題や恒常所得仮説に関する一連の議論わかってる?

あたりがよいリトマス試験紙かと.
 で,次に多いのは教科書は分かって居るけど,現代的なマクロの理論はわかってない人.ルーカスがどうのとか,RBCがとかいいながら実はわかってない人もけっこういるように感じます.この前も「今次の金融危機でNew Keynesianモデルの問題点がはっきりした.やっぱりRBCが妥当だ」と言っている人に出会いまちた…….これDSGEの論文を読んだことがないのがばればれ.包含関係を全然分かってない.
 第二関門までクリアした同士で意見が割れることも当然ある.けどそこでの対立はもうフォーマルな実証分析でつけるべきことで論壇マターではないと思う.RBCやNew Keynesian DSGEの流れに批判的な人は多いし,小島さんが重要視している小野先生による批判のように「う〜」となってしまう指摘も多いけど……RBC&NK批判のかなりの部分は「わけってないだけじゃね?」と思わせるものが少なくない.端的に言えば,あなたの自説を数量的なモデルに載せられるようにして下さい.そんで実証パフォーマンスで勝負しましょうぜ!しか言うことがない.


 もうひとつは経済学云々ではなく,マナーというか仁義に関するお話.例えば,相手が言ってもいないこと,ウソの情報で相手を批判する人は経済学どうの以前に問題外.これに加えて,アカデミックに片足がある論者については,学術論文と論壇の発言が異なっていないか?という基準も重要かと.
 先日,知人の編集さんから『エコノミストを格付けする』が送られてきたんだけど……光栄にも何カ所か僕の名前が.そのなかで,

 とあるんだけど……こういうのやめてよね.これを読んだ人は「(学説をその人の出自だけで解釈するなんて)飯田はエコノミスト失格だな」って思っちゃうじゃないの.ただでさえ馬鹿だと思われてるんだから,これ以上馬鹿だと思われたら仕事に差し支えます.最低限「明らかなウソで人をけなさない」くらいのマナーは身につけて下さい.
 余談ながら……これはいろんなとこで感じるんだけど,インタゲ・リフレ論はクルーグマンを教祖としているってイメージはどこから来たんだろう.そんな人いるんかいな? 確かにクルーグマンは論壇知名度あるし書き方が扇情的だからメディアに出すときに有効だ*1という理由でみんなよく引用したってのはあるけど,別にグルーグマン以外にもいくらでも論拠になる論文はあるんだけどなぁ.


 格付けついでに,悪名高い(?)『エコノミスト・ミシュラン』について.同書の問題点は,第一関門をクリアしていない(問題外組)と現代理論までは追えてない(やや時代遅れ組)とわかった上での意見対立(実証的にそれちがくね組),経済学以外の面でのマナー違反の峻別が明確でないところだと思います.直接会って話すとその区別はしているかんじなのですが,本単体だとちょっとそれがわからない.問題外組やマナー違反組と一緒にされた感をうけた人はまぁそりゃ怒ると思うんですよね.どんな意味で間違えているのか(または単なる見解の相違なのか)を明らかにしておいた方が良いと思います.


 

小島寛之「経済学はニセ科学?インチキ医療?― 確率論が拓く経済学の未来」

Seminar 45
小島寛之「経済学はニセ科学?インチキ医療?― 確率論が拓く経済学の未来」
司会 : 飯田泰之
日時 : 2009年11月29(日)15時〜17時
場所 : シノドス東急田園都市線駒沢大学駅
定員 : 7名
http://synodos.jp/seminar/index.html

 こっちはすでに満席なんですが,恐怖のリフレー・ザ・グレートの巻で挑発されているのでちょっと紹介.いやいや……セミナー中は司会に徹しますよ.気をつけていただくのはセミナー後の雑談での話の方ですw
 ハイパーインフレのコントロールですが,これは理論的な話題よりも,歴史上の事例を見た方が良いかと思います.歴史上のハイパーインフレって意外とすぐに収束します.いわゆる十大インフレーションの話.だらだらとコントロール不能な状況が続くのは政権がきわめて不安定(○○党がどうのではなく本格的にその国,その体制が継続できるか否か)な場合や金融引き締めが出来ない外的な制約(対外債務など)に限定されているといって良い.日本はその状況から最も遠いところにあると言って良いと思うのですが,いかがでしょう.
 また,小野モデルが依存する貨幣の限界効用の非飽和性の解釈についてうかがいたい.本当に非飽和なのか,財にくらべて飽和が遙か先であることの単純化なのか.前者はどうしても疑問が残る.そして後者ならば通常のモデルの特殊系に変換できる.僕としては後者の道に小野モデルの光があるような気がしてならないのです.

*1:だってマッカラムとかスベンソンって言っても知らないと思うし