福井総裁

いまさらですが……福井総裁の辞任問題(←実はとあるメルマガ原稿の長すぎて削った部分のコピペです)について少々.僕の考えは「まだ疑惑段階に過ぎないのだから解任や辞職勧告は行き過ぎ」「もし,利益相反やインサイダー取引についての証拠が出てきたら当然解任」というものです.


Web上での議論*をサーベイすると,福井総裁の辞任が必要だとする議論の主な拠り所は

  • 日本銀行の内規違反
  • 個別ファンド保有による日本銀行総裁業務との利益相反
  • 金融政策情報を利用して解約時期を決定したインサイダー疑惑

の3点が中心となっています.


第一の論点は,村上ファンドへの資金拠出行為が「日本銀行員の心得」における「世間から些かなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、そうした個人的利殖行為は慎まなければならない」に抵触するというものです.しかし,上に挙げた条文から考えてもなんらかの懲戒理由にはなるかもしれませんが,解任相当事由であるとまでは考えにくいでしょう.


第二の論点は,村上ファンドへの投資によって,本来の日本銀行の目標である「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」(日銀法第2条)以外の利害を目標に行動する結果となったのではないかというものです.しかし,村上ファンドの運用先(いわゆる村上銘柄)は特定の業界に偏った保有とは言えず,総裁の自主的な資金運用自体が禁じられていなかった以上,問題にするのは困難だと考えます.


第三の論点は,3月に量的緩和政策が解除されるであろうとの情勢をだれよりも得やすい立場にあり,金融政策の引締への転換によりファンド価値が低下すると予想して2月に引出を行ったのではないかとの疑惑です.しかし,これは現時点では憶測に過ぎません.今後の追求が待たれるところです.


この様に,現時点で明らかになっている証拠だけでは,解任や辞職勧告の根拠にはならないのではないでしょうか.