『日本経済復活――一番簡単な方法』本日発売!

 飯田です.満を持して今日発売.勝間和代さん,宮崎哲弥さんとの鼎談……とにかくデフレ脱却が必要で,そのために出来る手段はまだまだ残されているという本.


日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)


 本書の出版の経緯は,何おいても勝間さんが菅大臣(当時国家戦略担当)に行った脱デフレについてのプレゼンです.以前からリフレ政策に大きな関心を寄せていた宮崎哲弥氏が「一度勝間と話さなきゃいけない」とおっしゃっていたのをうけて,シノドス一同が策動した結果本企画が実現しました.
 リフレ政策には3つのレベルがあります.

  • 【モデレートなリフレ政策】0金利解除条件を明確にし,その遵守を厳守させる法的な裏付けを与える
  • 【標準的なリフレ政策】コミットメントに裏付けをあたえるために量的緩和・為替介入を併用する
  • 【強力なリフレ政策】貨幣発行益を直接家計・企業部門に注入したり(いわゆるヘリマネ的な財政拡大),為替レートを大幅な円安水準で時限的な固定相場制を設定する

 これらの理論的な解説は2009年11月12日のエントリ「インフレの起こし方」を参照下さい.そのいずれも日本では行われていません.海外中銀ならば「断固たる措置でデフレを防ぐ」と言えば信用されますが,デフレ状態での引き締めを3度行った日本銀行ではこれは不可能になっているというのが私の見解です*1
 さて,リフレ政策には様々な批判があります.しかし,その多くは「効果はそれほど大きくない」というたぐいのモノです.大きくなくてもマイナスの効果がないならやるべきです.
 そして,副作用として指摘されるのも資産価格の変動,海外でのバブルを引き起こす……といった程度のものです.ブランシャールが指摘するように国内資産価格問題には規制構造のチューニングを割り当てるべきで,いわゆる金融政策は「GDPギャップとインフレ」に割り当てるべきです.経済学者がティンバーゲンの定理をわすれてはいけません.なんでもかんでも金融政策で対応しようとしてはいけません.海外でのバブル云々についても同様です.当該国はそれぞれその国でのバブルに対する政策手段をもっているのですから,それに対して日本がとやかく考える必要はありません.
 第一に【モデレートなリフレ政策】と【標準的なリフレ政策】はいまや世界的に珍しい政策ではない.リフレ的な主張をするとすぐに【強力なリフレ政策】への批判で反論を試みようとする人がいますが,ごく普通のことさえやっていないことが現在の日本の経済政策の大問題なんだと言うことに,専門家ほど,もっと注意深くならなければなりません.


 これらの見解をいかに多くの人に知っていただけるか……そのための導入パンフレットとして本書を書きました.先日の山本幸三先生(自民党衆議院議員)の国会質問を見てもまだ道は遠い……でも着実に出口は近づいているように思います.どうか,「とにかくデフレ脱却が必要で,そのために出来る手段はまだまだ残されている」ことをより多くの人に知っていただければと思います.


姉妹本?

 本書とタイミングをほぼ同じゅうして,勝間さん,勝間さんの所属する「監査と分析」の上念司さんが本書姉妹編とも呼べる本を出版されています.『自分をデフレ化しない方法』は現在の環境下で個人が出来ることをよりいっそう突き詰めた本,『デフレと円高の何が悪か』は狭義の経済学からではなく経済政策を考えてもデフレと円高の問題は明確であることを示しています.こちらも何とぞよろしくお願いします.

自分をデフレ化しない方法 (文春新書)

自分をデフレ化しない方法 (文春新書)

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

*1:ちなみに僕は2回目の場早すぎる引き締め(量的緩和解除)までは,日本銀行が変わればそれでよいと思っていたのですが……それはもはや手遅れな意見となりました