教育について

稲葉先生のblogが高等教育の話に移行する感じみたいなので,中等教育についての話をここでメモ的にかいてみようと思います.

議論の焦点となったのが,専門領域の教育についてです.私は専門領域教育の拡大に賛成です.ここで,私の持つ具体的なイメージは現行の職業科(商・農・工)の教育課程の修正・改善.修正・改善の上で中学段階・普通科教育の中でもっと大きく取りあげていくことならば,その教育を通じ「基礎的なリテラシー」を獲得することも可能になるんではないかと考えられます.私も,これは本田先生の言う「学ぶことと社会との関連性の理解、学ぶことの意義(relevance)の実感」とかなり近い興味・関心なんではないかと考えています.さらに,このような共通の知識の保有が「共通関心に基づく公共的共同体への所属による対他関係の形成」に資する可能があるというのも全く同感です.

でこれだと独自視点ゼロになっちゃいますから,他の議論との差別化をはかっておきますと,私は

  • 専門領域教育は基礎的リテラシーを使えるツールとして有用
  • 受験とは別の「共通知識」の有用性

というのが専門領域の教育の必要性の根拠なので,第一点目の実証的妥当性があるのか否かが焦点となります(第2点目を重視するならば別にその共通知識は専門領域教育には限定されないはずだ).その意味で,私は,理念的な専門領域教育の必要性を主張しているのではなく,基礎的なリテラシー伝達手段として「専門領域教育は使えるんじゃないの」という仮説を提示していると理解いただければと思います.

というわけで,「専門領域教育は基礎的リテラシーを使えるツールとして有用」に関する実証的な根拠/批判がありましたらよろしく.


■追記■
なお,職業科教育の重視というと,昨今のニートとかフリーターとか学力低下とかいろいろ(笑)がらみ,でトラッキングと組み合わせて語られることが多いようですが,私はトラッキングシステムはこと学力面では実証的に疑問が多い(佐藤学『習熟度別指導の何が問題か』岩波ブックレット),というかダメだと考えています.