本田先生への回答

いまさらながら(bewaadさんがもう答えてしまってますが……)

a.
拡張的金融政策が有効であるのは国内労働市場が不均衡状態にあるためです.つまりは現行の実質賃金では労働供給に比べて労働需要が少なすぎる.これを一致させるためには実質賃金が低下する必要があります.そして需給均衡点で余剰(経済厚生の一基準)は最大化されます.

このような国内労働市場均衡のための政策と国際競争力(そんなものがあるとしてですが)はなんら関係がありません.ちなみに拡張的金融政策は円安を招きますから国際競争力(ってなんのことかわからんけどそれっぽいもの)はむしろあがるんじゃないかな.

b.
これは二つの可能性があると思います.第一が,現在の非正規雇用増加が正社員の名目賃金硬直性と伸縮的な賃金の非正規雇用という関係から生み出されている……つまりは正社員の給料高すぎるから代わりに低賃金で非正規雇用という場合.この場合,両者の単位時間あたり賃金を一致させることは,非正規従業員の給料も高いから誰も雇わないという反応を招くことになります.つまりは,今までかろうじて存在していた非正規従業員という働き口すら失われるというわけ.それならば,正社員の実質賃金をスムーズに下げた方が簡単な対応でしょう.

もうひとつの可能性は,情報の非対称性が存在する状況で,監視困難な労働に従事する正社員には効率賃金仮説が妥当し,監督が容易能な労働に充実する非正規従業員には競争的賃金を適用していると言うケース.この場合は,非正規従事者の増加は「監視可能な職域」の増加という一種の構造要因で決定しているので,マクロ政策(というかどんな政策でも)で何とかすることは出来ません.ちなみにこの場合に両者の単位賃金を同じにすることは,効率賃金設定による怠業防止効果を低下させるので経済厚生は低下.

c.
貨幣愛に基づくモデルでもインフレは厚生改善的です.典型的なのは阪大の小野善康氏のモデル.

d.
あ.僕はちなみに僕は基本的に市場原理主義者です.競争政策(市場原理主義)+安定化政策(ルールに基づく金融政策)というのは現代的な近経の基本思想だと思います.で,その上で,貨幣を通じた再分配をどのくらいやるかは議論の分かれどころでしょうが……これについては僕は比較的左寄りかも知れません.