金融学会中央銀行パネル

量的緩和に関してその効果と出口戦略というのが主な主題でした.パネルは田谷禎三氏,宮尾龍蔵氏,後藤康夫氏,藤井良広氏で交互に10〜15分程度の発言をする形式.ただ,相変わらず僕が間抜けで……なんらかの論文をだしてきてそれについて議論する日本経済学会の招待セッションみたいなのを想像していたのでちょっと(勝手に)失望しましたが.

量的緩和政策の評価として4人に共通する見解は「金融システム安定化という(当初は想定していなかった)役立ち方をしたのは認めるが,デフレ克服(という当初の目的については)不十分だ」という感じでした.ただ後者については各パネラーによって温度差があり,もともと聞くはずがない〜実物買いオペまで踏み込まなかったのが不十分まで様々.

しかし,宮尾氏の発言「(福井政権下の)量的緩和は追加緩和派と消極派の双方をそれなりに納得させた」がはからずも示すように,福井総裁の舵取りはなかなかしたたかではあるでしょう.その意味で量的緩和の効果については鋭い議論はみられず.

宮尾氏と後藤氏は期待経由での金融政策効果を評価しているかんじなんですが,「だからどうすべきか」については多少意見が異なるようでした.また出口政策についても,宮尾氏はターゲット型の政策は失敗時(コミットメント未達成時)に混乱が起きる可能性を重視して慎重派(要するに反対)である一方,後藤氏はよりコミットメント力の強い政策が必要としながらもターゲット政策には反対.前者は(賛成という意味ではなく言ってることが理解できると言う意味で)わかるが後者はよくわかりませんでした.

そのなかで気になったのは,日経新聞でも同じような話を聞いたことがある宮尾氏の「日本銀行の金融政策を批判する人がいる→期待の不安定化・分散の拡大→デフレの悪化」というはなし.彼の議論の中心になる部分なんですがモデルでもあるんだろうか??通常の因果関係は

  • 不味い政策→批判噴出→政策が不味いからデフレ悪化

だと思うんですが,宮尾氏のレジュメを素直に読むと

  • 政策批判→政策の善し悪しとは関係なく政策批判のせいで経済悪化

と言いたいようによめてしまう.じゃぁ政策に文句を言う人がいなくなれば経済厚生は上昇するという話なんだろうか……

あと,小ネタとしては後藤氏が提示した日本の金融政策の"クセ"への言及が興味深かった.「金融引き締めは短期間に大幅に行われ,緩和派長期間掛けて小幅にしか行われない」ことを短期金利の推移から示したものですが,直観的にもそのとおりだなぁ……と.また,この期に及んで土地バブルが起きているから資産価格をにらんで金融引き締め時期を探るべきだと言っている人がいるのにはぐったりしました.